「ボディビルダーの筋肉は、見かけだけで使えない」
こんな言葉を聞いたことがある方もいると思います。
そもそも「使えない筋肉」などあるのでしょうか?
今回は、スポーツに活かせる「使える筋肉」を鍛えるためのトレーニングについてお話しします。
「使えない筋肉」は存在するのか?
結論から言うと、ボディビルダーの筋肉も、100m走のスプリンターの筋肉も、解剖学的・生物学的には全く同じです。
ボディビルダーの中には、ベンチプレスで150kg以上持ち上げられる方もいますし、200kg以上で何回もスクワットをする方もいます。
彼らの筋肉は大きいだけでなく、大きさに比例して筋力もとても高いのです。
「出来るだけ重たいものを持ち上げて筋肉を大きくする」という目的に対して、ボディビルダーの筋肉は「使える筋肉」といえます。
なぜボディビルダーの筋肉は「使えない筋肉」と言われるのか?
ではなぜ、ボディビルダーの筋肉は「使えない筋肉」と思われてしまうのでしょうか?
それは恐らく、
- 脚の筋肉はすごいのにスプリンターほど速く走れない
- サッカー選手のようにフィールドを素早く切り返したり、俊敏な動きができない
- すごい上半身の筋肉なのに、野球選手のように速いボールが投げられない
など、「大きな筋肉をスポーツに活かせていない」場合に、「使えない」と思われてしまうケースが多いようです。
どうすれば「使える筋肉」にできる?
スポーツパフォーマンスを向上させる「使える筋肉」にするには、筋肉の3つの能力を鍛える必要があります。
- できるだけ素早く力を立ち上げて高いパワーに到達する「爆発力」
- 筋肉や腱の弾性力を巧みに使った「バネ」
- 全身で生み出したパワーをターゲットの動作部位に巧みに伝えていく「連動性」
これら3つの能力を、近畿大学 生物理工学部の谷本直哉准教授は、「パワー発揮のための基礎スキル」と呼ばれています。
「パワー発揮のための基礎スキル」は筋トレでは高めにくい
「瞬発力」「バネ」「連動性」の3つの基礎スキルは、一般的な筋トレでは高めることが難しいです。
なぜなら、一般的な筋トレは筋肉を大きくし、筋力を強くすることが最優先なので、「じっくり効かせる」ことがポイントだからです。
筋肉にかかる負荷を出来るだけ途切れさせないことが、上手な筋トレなのです。
しかし、これはスポーツではマイナスとなりかねません。
例えば、柔道の試合で、筋肉に効かせる癖があれば、すぐに疲れて動けなくなってしまい、負けてしまいます。
試合で勝つためには、
少ないエネルギーで高いパフォーマンスを発揮し続けられなけばならないのです。
スポーツでは最小の力で高いパフォーマンスが求められる
スポーツでは、筋肉がすぐに疲れてしまうような動き方はマイナスです。
最小の力で高いパフォーマンスを発揮することが求められます。
では、どうすればよりスポーツに近い形で筋肉を鍛えることができるのでしょうか?
実際の競技動作に負荷をのせるのは危険
ここで注意しなければならないのは、「実際の競技動作に負荷をのせるのは危険」だということです。
例えば、あなたがピッチャーだとして、
球速を上げるために普段練習しているボールより重いボールでピッチング練習をしたとします。
どうなると思いますか?
高い確率で肩や肘を壊し、練習ができなくなってしまうでしょう。
もし怪我をしなかったとしても、「重いボールを速く投げる技術が身につく」だけで、球速を上げられるとは限らないのです。
このように、安易に実際のスポーツ動作に負荷をつけてトレーニングとするのは危険です。
ケトルベルトレーニングはスポーツの動作に近い
スポーツでは、筋肉の弾力性(バネ)を上手に使ってパワーを生み出すことが重要です。
例えば、走り高跳びの選手が助走をし、思い切りジャンプしますね。
助走によって生み出されるエネルギーを下半身の筋肉の弾力性を上手に使って、ジャンプに活かすのです。
この筋肉や腱の「バネ」を活用するスキルは、ケトルベルスイングによく似ています。
振り上げたケトルベルが戻ってくるときに持っているエネルギーを、
身体の背面の筋肉の弾力性を使って、さらに大きなパワーに換え、ケトルベルを押し出します。
ケトルベルトレーニングがスポーツ動作に近い理由の1つです。
バーベルとダンベルよりケトルベルがおすすめな理由
強いパワーを発揮するためのトレーニングは、バーベルやダンベルでも行うことができますが、ケトルベルをおすすめする理由は3つあります。
- バーベルより簡単にテクニックを習得でき、自宅でもできる
- 遠心力がかかるので、ダンベルより大きな負荷を筋肉にかけることができる
- ダンベルより力をコントロールするスキルを磨きやすい
①バーベルより簡単!自宅でも出来る!
一般的に、競技を問わず、アスリートの多くはパワーを高めるためにバーベルを使ってパワークリーンやスナッチを取り入れています。
テレビで、柔道の大野選手がとんでもない重さのバーベルやダンベルでパワークリーンやスナッチを行っていました。
ウエイトを上限なく増やして行けるので、筋力やパワーの向上に合わせて負荷を増やして行けることがバーベルの最大のメリットです。
しかし、バーベルパワークリーンやスナッチはとても難易度が高いエクササイズです。
怪我を防ぐため、テクニックをマスターするまで、動作を分割してバーベルのみで練習する必要があります。
パワー発揮を高めるために十分な重さでトレーニングできるようになるまで最低でも3ヶ月はかけた方が良いと聞きます。
また、自宅でいつでも実施するというわけにはいきません。
一方、ケトルベルはバーベルと比べてテクニックを簡単にマスターすることができます👇
また、ケトルベルならバーベルよりずっと省スペースなので、自宅に揃えることができます。
②ケトルベルならダンベルより効果的なパワー発揮トレーニングが可能
ダンベルでもパワークリーンやスナッチといったパワー発揮トレーニングは可能です。
バーベルよりずっと簡単で、片手ずつ行えるので左右の筋力差を把握することもできます。
しかし、ダンベルを握る手のひら(グリップ)の中心にウエイトの重心があるため、ウエイトの重さがそのまま負荷となります。
一方、ケトルベルはグリップとウエイトの重心が離れているため、遠心力がかかり、実際の重さより大きな負荷を筋肉にかけることができます。
スイングなど反動を利用して行うエクササイズでは、ダンベルよりケトルベルの方がずっと効果が高いのです👇
③ケトルベルならダンベルより力をコントロールするスキルを磨きやすい
もう一つ、ケトルベルがダンベルより優れている点は、力をコントロールするスキルを磨きやすいことです。
例えば、ダンベルでのスナッチは床から頭上まで一気に持ち上げるだけです。
一方、ケトルベルでのスナッチは、グリップを握る力をコントロールしてケトルベルを回転させないと手首を強打してしまいます。
床から一気に引き上げ、顔の高さを越えるあたりで少しグリップをゆるめてケトルベルを柔らかくキャッチします。
ダンベルよりも繊細な力のコントロールが必要なので、微妙な力の調節を効果的に磨くことができます。
ケトルベルなら自宅でもハイレベルなパワー発揮トレーニングが可能!
ケトルベルトレーニングなら、自宅でも、
- できるだけ素早く力を立ち上げて高いパワーに到達する「爆発力」
- 筋肉や腱の弾性力を巧みに使った「バネ」
- 全身で生み出したパワーをターゲットの動作部位に巧みに伝えていく「連動性」
3つの基礎スキルを高める、ハイレベルなパワー発揮トレーニングが可能なのです。
参考動画
安全&効果的にケトルベルトレーニングを学びたい方へ
今回は、
- スポーツで役立つ「使える筋肉」を鍛えるにはどうすれば良いのか
- パワー発揮スキルを磨くためにケトルベルがおすすめな理由
をお話ししました。
あ安全&効果的にケトルベルトレーニングを学びたい方は、ぜひプログラムを体験してみて下さい!
ウエイトトレーニング歴10年以上、パーソナルトレーナー歴8年以上、ケトルベルトレーニング歴4年以上(2021年3月時点)のプロトレーナーが、ケトルベルトレーニングを初心者でもわかりやすく解説しています!シェイプアップからスポーツのパフォーマンスアップまで幅広いニーズに応えられる、自信のプログラムです!
出典
谷本道哉、荒川裕志、石井直方『使える筋肉・使えない筋肉 アスリートのための筋力トレーニングバイブル』、{第二版}、株式会社ナツメ社、2019、p50-59、(ISBN978-4-8163-6551-5)
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