【2021/7/7:参考動画を更新しました!】
アメリカを中心に人気となっているtabata式トレーニング(tabata)。
「超ハード!」というイメージで知っている方も多いと思います。
短時間で心肺機能を追い込むことで、サッカーなどダッシュとジョグを繰り返す球技や、
格闘技など5分以内で終了する競技におけるスタミナを飛躍的に向上させてくれるtabata。
そんなtabataが、ケトルベルとの相性が抜群なのをご存知ですか?
実践!ケトルベルtabata!
トレーナーが実際にやってみました!
今回のプログラムは
- プライオプッシュアップバーピー
- スナッチ&ラックスクワット
- スキーヤースイング
- クリーン&プレス
この4つのエクササイズを2周行いました。ケトルベルは16kgを2コ使っています。
やり切った後は倒れ込むくらいハードですが、達成感は半端ないです!
使用している曲名は「tabata songs 【Deep Orchestra Tabata (feat. Coach)】です。
それでは、tabataがどんなトレーニング方法なのか、詳しくお話しします。
「tabataトレーニング」とは?
tabataは、立命館大学スポーツ健康科学部 田畑 泉教授が考案されたトレーニング方法です。
「20秒動いて10秒休む」というサーキットを6~8セット繰り返します。
トータルの時間はわずか4分くらいですが、その強度は驚異的です。
重要なポイントは、「8セットで疲労困憊になるまで追い込む」ということです。
終わった直後にまだ動けるようでは、正式なtabataとは言えないのです。
スピードスケート金メダリストも好んで取り入れていた
tabataはスピードスケートの金メダリスト、清水宏保選手が好んで取り入れられていたことで有名です。
彼は、パワーマックスという自転車型のマシンを全力でこぎ、tabataを行っていました。
同じエクササイズを8セット繰り返すのが一番ハードなプログラムだと思います(^^;)
一流アスリートもパフォーマンスアップのために取り入れていたtabata。
最近よく聞く「HIIT」と何が違うのでしょうか?
そこも少し触れておきましょう。
tabataとHIITの違い
HIITとは、High Intensity Interval Trainingの略で、「高強度インターバルトレーニング」と訳します。
これだけ見れば、tabataと何も変わらない感じですが、何が違うのでしょうか?
それぞれの特徴をまとめてみます。
tabata
- 「20秒動いて10秒休む」というインターバルの時間は固定
- 「疲労困憊になるまで」追い込む必要がある
- 6~8セット繰り返す
HIIT
- インターバルの時間は自由に決めてOK(30秒動いて15秒休む、など)
- 疲労困憊になるまでおいこまなくても良い
- 繰り返すセット数も自由に決められる
YouTubeで、tabataを実践している動画を見ると、「今日は3回も行ったぜ!」というコメントが書かれていました。
tabataは「疲労困憊になるまで」追い込む必要があるため、1日に3回も行うことはできないはずです。
よほど体力がある鉄人なら別ですが(^^;)
この場合は、tabataではなくHIITを行ったというべきでしょうね。
細かいことですが、欧米ではtabataとHIITが同じトレーニング方法を指してしまっていることが多く、
考案者の田畑教授も残念に思われているそうです。
tabataトレーニングで期待できる効果は?
では、tabataを行うことでどのような効果が期待できるのでしょうか?
科学的に立証されている効果は2つあります。
- 心肺持久力の向上
- 筋持久力の向上
これらの他に、トレーニング後の体脂肪燃焼(アフターバーン)の効率が良くなり体脂肪を減らせるなど、付随的に得られる効果もありますが、
ダイエットやシェイプアップ効果というより、身体機能の向上を目的としたトレーニング方法です。
従って、「tabataで痩せられる」と謳っているものは、間違いではありませんが、
tabata本来の目的をきちんと理解していないと言えます。
tabataで心肺持久力アップ!
心肺持久力とは「全身持久力」や「有酸素性持久力」とも言い、長距離走などで必要となる、
「比較的強度が低い運動のパフォーマンスを長い時間維持する能力」のことです。
心肺持久力を高めるためには「最大酸素摂取量(VO2Max)」を向上させることがカギとなります。
VO2Maxは「1分間に身体が取り込むことができる酸素の最大値」を表し、
- 心臓が1分間で送り出せる血液の量
- 筋肉が取り込める酸素の量
この2つによって決まります。
tabataを継続的に行うことで、VO2Maxが向上し、心肺持久力アップに役立つことが研究で明らかになっています!
tabataで筋持久力も同時にアップ!
筋持久力とは「スピード持久力」や「無酸素性持久力」とも言い、
5分以内に決着がつく格闘技や、ダッシュとジョグを繰り返すラグビー・サッカー・バスケットボールのような競技において必要な、
「強度の高い運動のパフォーマンスを長く維持する能力」のことです。
わかりやすく言えば、筋持久力は「筋肉が乳酸や水素イオンなどの代謝物にどれだけ耐えられるか」を表すと言えます。
強度が高い運動を行うと、筋肉はエネルギー源であるATPを作り出すために、主に糖質を分解します。
その時に代謝物として作り出されるのが乳酸や水素イオンです。
これらはみんな酸性の物質なので、筋肉が激しく動き続けると内部はどんどん酸性になってゆきます。
酸性になってゆくと、筋肉が重く感じられたり、痛みを感じたりします(即発性筋肉痛)。
また、筋肉は活動することで酸素を消費し、二酸化炭素を排出するので、酸素不足状態にもなっていきます。
筋持久力は、筋肉の内部環境が悪くなってもそれに耐え、高いパフォーマンスを維持するための能力なのです。
tabataを継続的に行うことで、心肺持久力に加え、筋持久力も同時に向上することが研究で明らかになっています!
tabataはどんな競技におすすめ?
心肺持久力と筋持久力を同時に高めることができるtabataは、
全てのスポーツのパフォーマンスアップに貢献すると言ってよいと思います。
なぜなら、競技の特性により運動強度に違いはあっても、
持久力は全ての競技に共通する重要な能力だからです。
筋持久力を高めることで、
- 柔道のような5分以内で終了する格闘技
- 全力ダッシュとジョグを何度も繰り返すサッカーなどの球技
- 400m走やスピードスケートなど1分くらいで全力を出し切る競技
運動強度が中~高強度に該当する競技のパフォーマンスアップに貢献しますし、
全身持久力を高めることで、
- 長距離走
- トライアスロン
- ロードレース
など、運動強度が比較的低く、10分以上継続して動き続ける競技のパフォーマンスアップに貢献します。
tabataを行うタイミングと頻度
運動強度がとても高いtabataは、行うタイミングと頻度に気を配る必要があります。
すでに述べたように、「疲労困憊になるまで追い込む」必要があるので、疲れて残りの体力がわずかの時は避けた方が良いでしょう。
一般的には、競技練習を行わない日や、練習の序盤で身体が疲れていない時に行うのが良いと思います。
ただ、プロアスリート向けですが「あえて疲れている時にtabataを行って全力を出し切る」という方法もあります。
僕自身も、tabataをトレーニングの最後の「締め」として行うことが多いです。
「完全燃焼まで、まだ少し体力に余裕があるな」という時に行うイメージです。
頻度については、週に2~3回行うが望ましいです。
もちろん、身体の疲労具合や体調により、頻度を調節して下さい。
tabataを安全に行うために守ること
トレーニング中のケガや事故を防ぐためにも、以下の注意点を必ず守りましょう。
- ウォーミングアップは必ず行う(ストレッチだけでなくある程度心拍数が上がるエクササイズを盛り込む)
- 高血圧や動脈硬化症など循環器系の疾患がある方は行わない
- 大きく身体を動かせるスペースを確保する
- 競技練習との兼ね合いを考え、身体が疲れていると感じる時は行わない
- トレーニング後はストレッチやマッサージで身体のケアをする
「安全第一、効果はその次」覚えておいてください。
tabataプログラムを作る時のポイント
次に、tabataのプログラム作成についてポイントが3つあります。
- 全身を使うハードなエクササイズを中心に選ぶ
- 複雑すぎる動きのエクササイズは避ける
- ケトルベルやダンベルなど器具を重くしすぎない
1つずつ詳しく見ていきましょう。
1.全身を使うハードなエクササイズを選ぶ
tabataに盛り込むエクササイズは、
全身の筋肉を同時に使い、心拍数をとても高くするエクササイズを中心に選択しましょう。
シットアップなど、床に横たわる腹筋系エクササイズは、心拍数を下げてしまうためおすすめしません。
バーピーやスクワットジャンプなどのジャンプ系、マウンテンクライマーや腿上げなど手足を素早く動かすエクササイズがおすすめです。
2.複雑な動きのエクササイズは避ける
全身の筋肉を同時に使うエクササイズを選ぶことが大切ですが、あまり動きが複雑すぎるものは避けましょう。
tabataは最後の方は疲労困憊になるので、フォームが崩れやすくなります。
動きが複雑すぎると、フォームが崩れた時に肩や膝などの関節に負担をかけてしまいます。
バーピーやサイドシットスルーくらいの動きなら大丈夫だと思います👇
3.重すぎるウエイトは危険
ケトルベルやダンベルを用いることで、運動強度の調節がとてもしやすくなります。
器具なしでは選べるエクササイズが限られますし、
広背筋やハムストリングなど、意識しにくい背面の筋肉を使うことが難しいです。
ただ、ケトルベルやダンベルを重くしすぎないように注意しましょう。
終盤で疲れてきても、最後まで正しいフォームが維持できる重さを選択しましょう。
はじめは「軽すぎるかな?」と思うくらいの重さで行い、少しずつ増やしていくようにして下さい。
おすすめのプログラムの組み方は?
おすすめのプログラムの組み方は3パターンあります。
- 1種目のみを8セット繰り返す
- 2種目を交互に4周繰り返す
- 4種目を順番に2周繰り返す
僕の経験から、1つ目のパターンが最もハードです!
例えば、8セット全てをバーピーのみで構成すると、身体だけでなく精神的にも追い込まれます(^^;
また、限られた筋肉にのみ負荷が集中してかかるので、翌日筋肉痛になりやすいです👇
2つ目のパターンは、組み合わせるエクササイズを工夫することで、
たくさんの筋肉に負荷を集中させることができます。
例えば、
- ケトルベルスイング
- バーピー
この2つを組み合わせれば、ほぼ全身の筋肉が使われるので「最強タッグ」です!
3つ目のパターンは、冒頭の動画のようなイメージです。
どんどん異なるエクササイズに移っていくので、楽しく飽きにくいのがメリットです。
特定の筋肉に負荷を集中させるには不向きですが、全身の筋肉にバランス良く負荷をかけることができます。
エクササイズの組み合わせや、順番を入れ替えるだけでバリエーションが広がり、効果も変わるので面白いですよ!
ケトルベルは高強度トレーニングと相性抜群!
ケトルベルはtabataやHIITなど高強度トレーニングとの相性が抜群です!
その理由は3つあります!
- ケトルベルが生み出す遠心力が負荷を倍増させる
- 全身の筋肉を同時に使うエクササイズが多い
- 豊富なバリエーションで筋肉を慣れさせない
1.高強度のカギはケトルベルの「遠心力」
ケトルベルの最大の特徴は、その形により生み出される「遠心力」です。
振り上げることで遠心力がかかり、実際の重さの2倍以上の負荷が体幹にかかります。
ケトルベルトレーニングの反動に耐えることで強靭な体幹が作られるのです。
2.ケトルベルは全身の筋肉を同時に使うエクササイズが多い
ケトルベルエクササイズは、全身の筋肉を使うものが多いのもメリットの1つです。
例えば、クリーン&プレスの場合、
クリーンで股関節周りの筋肉を使い、プレスで上半身の筋肉を使います。
短時間で心肺機能を追い込む高強度トレーニングにぴったりですね。
3.ケトルベルは豊富なバリエーションで筋肉を慣れさせない
ケトルベルエクササイズのバリエーションは豊富です。
- ケトルベルを振り、往復する反動を使う「スイング系」
- 床から爆発的に引き上げる「デッド系」
- 腰の高さに下げた姿勢から、素早く切り返して引き上げる「ハング系」
使い方次第で3タイプのバリエーションがあります。
私たちの身体は適応力が高く、同じトレーニングを繰り返していると、早ければ2~3ヶ月で慣れてしまい、停滞してしまいます。
これを「順応」といい、成長が停滞してしまうことを「プラトー」と言います。
プラトーを乗り越えるために、様々なバリエーションを試し、筋肉に新しい刺激を入れるわけですね。
ケトルベルエクササイズはバリエーションが多いので、筋肉を慣れさせないのです!
安全に&効果的にケトルベルトレーニングを学びたい方へ
今回は、tabata式トレーニングについてお話ししました。
- 「最後まで走り続けられるスタミナが欲しい」
- 「試合の途中でバテて集中力がとぎれてしまうのを直したい」
と思っている方は、ぜひケトルベルトレーニングとtabataを組み合わせて、
心肺持久力と筋持久力両方を同時に高め、パフォーマンスアップに役立てて下さいね!
ケトルベルトレーニングを安全&効果的に学びたい方は、ぜひプログラムを体験してみて下さい!
出典
田畑 泉『究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング』、株式会社扶桑社、2015、p12-28、(ISBN978-4-594-07296-4)